〜 目次 〜

首切り完全撤回万歳!

  何てうす気味の悪りイ

  白髪

  血脈

  馘(クビ)

ある母親の一日

  いま帰ってほしい

  三池のきょうだいへ

   雨のピケラインで

  公園風景

  とうちゃんば返せ

  11月9日

  半未亡人

  上村さんに捧げる

  三池の歴史に忘却はない

  怒り

笑顔を交す日のために

  やがてくる日に


首切り完全撤回万歳!
ー 1953.11.12 最良の日 ー

上野

 勝ったのだ。
 うん。
 なによりもええこっだ。
 生クビがつながったんだぞオ!
 うん。
 まったくちげねえ。
 見てみろ。
 「特報」ちゅうビラの字の太さも太さ。
 真っ赤な血のいろ。
  万歳! 三池労組。
  万歳! 炭婦協。
  万歳! 拒否者。
 声たてて泣きだしたやつ。
 がまんできるかいよ。
 だき合ったまんまものもいえずに
 へたへたと地べたに座り込んだやつ。
 溜飲がいっぺんに下がってしもうたんだ。

 ザマア見やがれッ!
 目さきの欲と意気地のねえさに
 おらたちをウラ切ってのこのこやめてしまったやつ。
 ”あんまりやりすぎる”とゆうて
 おらたちの仲をメチャメチャにしようとたくらんだ
 会社の手先ども。

 だが まあ
 ようがんばったなあ! みんな。
 クビ切り状の四斗樽棺桶もかついだぞ。
 夏 じゅっくりぬれてデモしたぞ。
 柄にもにゃ
 次長課長がブルブルふるうたぞ。
 一番しゃくにさわったツあ
 ケイサツのやっどんが
 出しゃばってきたこつだ!

 炭婦協のお方々。
 おお まったくありがてえ。
 カカアというもんな
 こうも強うなるもんか。
 そしたらほんとだ。
 とほうもねえほどピチピチ若うなったぞ!
 あんたたち
 いつんまにそがん美しゅうなったか。

   よおーしッ!
 ひさしぶりに畜生!
 おらのカカア
 うんと可愛がってやらねえでどうしておくもんか・・・・・てんだ。
 ワッハッハッハッハ。
 ワッハッハッハワハハハハハ。ワワ。

 万歳だあ!

 おっとット、つぎは何だ!
 賃上げ ボーナス
 賃上げ ボーナスだ!  


何てうす気味の悪りイ
ー 11.27勝利以降 ー

上野

何て うす気味の悪りイ!
あやっどんがおっどんたち鉱員に
やたらニタニタするごつなったこん頃のかっこう。

二、三日前もそうだ。
朝出勤しよったら
”やあ!おはようざあす。早やあですな”
ごていねえに自転車のうえから
追いこして行っただ。
おら びっくりしただ。

”へっ!”と 喉がつまってしもうただ。

今日はまた
会社のヒケに出勤票ば取りに行くと
 ”やあ!フロにはいったんですか。
 寒むうなりましたで冷えんように用心なせえ。カゼひきますでえへっへっへえへへへへへ・・・・・”
妙な笑いかたばして ハンコをおしてくれただ。
尻こそばゆうしてしようがなかっただ。

そう言えば
オイ!
おめえとこの職場ぢゃ 何だそうじゃねえか。
今までにゃ
係員と職工長どんが
自ばら切って職場のもんセーブば
ボーネン会にようだそうじゃねえか?
 トホホホッ ようだそうじゃねえか?
 トホホホッ こりゃあ
 オイ
 あんまりできすぎとるたあ思わねえかよ。

何てうす気味の悪りイ!
とほうもにァこつばかりはやり出したもんだのう。
 どいつも こいつも
 同んなじ顔だぞう!
 ヘラヘラ笑うてばかりおって。
 どうだ
 スト中のあやつどんが
 厚かましゅういかめしゅう
 ”もうたいていでやめた方がよかばん”
 肩ば叩いておどし廻った。
あん憎たらしい顔面は
何処さ かくしてしもうたつか。
”ヘッヘッヘエエ・・・今に見ろ”と云わんばかりの
どうも納得のいかんあやつどんが目つきだ!

危ねえぞオ!
気をつけろ!
 もう一ぺんとなりのもんと
 しっかり
 腕ば組んどるか。
 お互いに見合って見ろ!
そうだ!
うん。これでよし!
あやつどま
おッどんたちばホネ抜きしゆうてチしょっとぞ!
一ぴゃ呑ませて
ヒョロヒョロ腰の骨ば折っしょろでしょっとぞオ!
うめえ具合、うーんとあげつけておいて
一ぺんにドスーンと尻もちば
つかすうでチしょっとぞオ!
おっどんたちが火の玉んごッ腹立てとっとば
ええあんばいまるむうでチしょっとぞオ!
腕ば組め!
嬶アとしっかり手ば握れ!


白髪

末松

お父さんの頭は 白髪んいっぱいあるバイ
幼稚園に行っとる次男が 白髪を見つける
「とってやろか」「ウンとってくれ」
汚い手が頭をなでくる
だがジットまかせる
甘酸ッぱいにおいが鼻にくる
だがジットがまんする
「お父さん ナシテ白髪あると」
「そりゃお父さんは歳のフエタけんたい」
「お父さんナいくつ」
「三十九タイ」
「ホンナラ拾バ三つと九バ一つネ」
「ウン」
「僕たちでん歳とって白髪ン出来るとネ」
「ウン正光ちゃんデン一パイ生えるよ」
「ワッ!僕は出来んがヨカ」
傍で妻が笑う
「お父さんはネ、坑内に毎日お仕事に行きなさるケン、早う白髪になりなさるとヨ」
妻が無造作にいった言葉
だが 何故か 私の心に温かくふれる

(作者は8年後の昭和38年11月9日三川鉱大爆発の犠牲となって帰らぬ人となる)


血脈

砂原

俺たちは いま
ストをやっているが
会社から
おっぽり出されたというのが本当だ
俺たちは
何も悪いことはしていないのに
三月十六日より
「働きに来られる必要はありません」という
これみよがしに
ペッタリとはり出された
不恰好な門扉の
ひとひらの紙きれ
俺たちが
それに
歯をくいしばり
くやしまぎれに赤旗をふりまわし
景気づけにワッショイとがなれば
奴らは
「会社をつぶす者はたれか 郷土を暗くする者はたれか」

得たり顔して
ふれ回る

ついこの前で
(俺たちにはそんな気のする)
足カセの鎖の音が
糞と小便と坑木の腐れとの間を
ゆるりゆるりと流れたという
その吐き気を催すような匂いのしみついた
坑内には
戦争というただそれだけの理由で
狩り出され
敗けたというただそれだけの理由で
狩り集められた
俘虜たちの
青白い微かな吐息が
いつか
人知れず
投げかけられていたという
ミシリという腹にこたえる震え
パラリと剥げ落ちるツウタン
それは
銭金のように
しじまに
うごめいて
背筋をはい
やがて
木枠をきり飛ばし
カッペをへし曲げ
この俺たちを
たわいなく
ひとのみにしようとする
本をひろい読みしている
坊主の奴
焼酎を買うて待つ
かかあの奴でさえも
いっしょくたに何もかも

ドドドドドド噴出してくる
ヘドを吐き
坑道にへばりつき
脳ミソをえぐられ死んでいった仲間を

 「長崎の被爆者が 十年も経ったいま なお あの時の放射能でたおれゆく人がありますが
 その恐ろしさに いまは元気でいるものの この次は私の番ではないかと毎日毎日が不安で
 たまりません」と しみじみ語ったその気持は 俺にはよくわかる と口ぐせにそういって
 俺たちの仲間を

俺たちはみつけた
そこで
その炭鉱で
この俺たちはいま
ストをやっている

俺たちは
ツルの穂先を突ったてながら
汗が眼にしみるときは
栄養がたらないのかなと思い
腰がいたむときは
青畳が無性に恋しくなる
あすは日曜と考えれば
取れない眼のふちのクマどりが気になる
それさえもが
奴らは
気にくわねえというのだろう
ロックアウトをくらわせやがったりして
態のいい
首切りではないか!

それと知ったとき
この俺たちは
キリキリキリと
はらわたをしめつけるような
機械の中で
やっと掘り起こした
炭塊を
胸いっぱいにして
涙を流して泣いた
この俺たちは
何も悪いことはしていないのに

ただ

囚徒や
俘虜たちのした仕事を
いまやっている

それだけで
この俺たちには何もかもが
ゼイタクだと
奴らは
いうのだろう

「見張」によってはきためられ続けてきた
塵埃のように
炭鉱の呪いが
この俺たちの口から
いま
吐き出されようとしている
 −−−俺たちの
 −−−生命を
 −−−もう少し
 −−−ていねいに
 −−−とりあつかってくれ

そして
奴らが
 「あなたたちのいのちは会社あってのものですよ」

つぶやくとき
俺たちの
アカハタは
武器となり
スクラムは
砦となり
ワッショイはこの俺たちの
労働者の思想となってゆく

さあ
みんな寄ってこい!


馘(クビ)

いわさき

そのとき
私の手はふるえていた
胸がズキッと疼いた
「来るのはたしかだ、落ち着くんだよ」
夫の言葉がよみがえる
「ご苦労さん」
赤い自転車の人は
青い顔してた
罪を犯した人のように。

馘!
馘!
馘だ・・・・と
簡単に
土偶の首でもねじ切るように。

あなたは
平和の嫌いな人
 そうだったのね
 だから
 平和を 自由を
 労働者が生活できる賃金をと叫ぶ夫がお嫌いなのね。

きっと
夫の首は守って見せます
 一粒の米が尽きても
 一円の金がなくとも
夫の首は切らせません。

そうだ
今夜は
二合びんを買っておこう
夫の好きな
うば貝のナマを買っておこう
私も
ちょっぴりいただこうかな・・・・。


ある母親の一日

Y・K

病院の勤務を終えて それから私たちは 闘争本部に詰める

「あの人も第二組合に行かしたげな」
「あげん頑張っとらした○○さんも脱落さしたげな」
「裏切りもんがーーー憎らしかねエ。私たちは最後までガンバロイね」

私たちの敵は会社なのだ
それでも時々判らなくなってくる
第一組合と第二組合とが闘っているのではないかと

そして暴力団が現れたり
第二組合を護衛する警察官でうずまっている大牟田
団結集会を終えて
子供たちも眠って
静かになった家に帰る
冷たくなった麦飯をかきこんで
夕刊を読む

真相を知らない多くの人たちに
この目で見た本当のことを知らさなければならないと
新聞を持つ手が
ふるえている

私たちの敵をはっきり見極めよう
そして負けてはならない闘いであることを ひとりでも多くの人に知らせよう

子供は無心に眠っている
私たちは子供の未来のためにも
人間が人間の首を
平気で切るような世のなかを
つぶさなければならないのだ

クレゾール臭い手で子供を抱き寄せながら
勝利の日のためには
どんなことでも耐えて行こうと
誓いながら
明るい明日のあることを確信する


いま帰ってほしい
(第二組合の中のわれらの仲間に)

加藤

三池炭鉱新労働組合よ
あなたの生誕は
自棄と頽廃の臭いがする。

みんな知っている
新組合員の素顔
役員選挙に破れ、批判され
冷や飯をくいつづけていた人々
彼らが欲してやまぬ役員になるには
べつの組織をつくるほかなかった。

その欲求と
会社の組織分断の欲求が
むすびあった。

分裂中央委員会には
会社と裏口でつながる再建本部から
万余の握り飯がとどけられた。
秘密な会合にはビールがおかれ
ビールの壜のしたには
紙幣がひそめてあった。
ハイヤーをのりまわして
ただ酒を鱈腹のんで・・・・

金と暴力で支えられて
やっとできあがった新組合よ
あなたの生の場には
あかるい明日はない。

やがて・・・・
職制が威厳をとりもどし
ちんばの鶏が幅をきかし
酒食と頽廃がびまんし
過重労働に追いまくられ
日々は逆行して・・・・

いつか歩いてきた
その通にたたされている
自分を発見するだろう。
仲間よ
そのときでは遅すぎるのだ。

四月
ほんとうの闘いは
全炭労無期限ストにはじまる。
まだ間に合う
ひとりでも多く
一日でも早く
光栄ある真の労働者の戦列に
帰ってほしいのだ。


三池のきょうだいへ

高島

三池のきょうだいに伝えよう
夕張のヤマから伝えよう
名もない貧しい母親の
ささやかな思いを伝えよう

”久保清君が殺された”
朝刊を手にしたまま
やっと十ヶ月になる娘に
私は何度もいいきかす
「おじさんが死んだのよ。さされて死んだのよ」
だかれた娘のほっぺたに
私の涙がふりかかる

私の思いは遠く
まだ見ぬ九州へ飛ぶ

警官をかこむ君たちの
ヘルメットの下にもえている
怒りににえたぎるまなざしが
はげしく
私の胸をゆさぶる

三池のきょうだいに伝えよう
夕張のヤマから伝えよう
四月になっても雪が吹き流れ
ズリ山さえ白い
夕張のヤマから伝えよう
凍りつく二月の朝
このズリ山の下に命を絶った
四十人のなかまのことを

会社はいう
ーーヤマを守るため 生産のため 注水は やむを得ませんーー
永久に遺体さえ上がらず
暗い地の底に 水没して果てた
二人のことを
クリコミに運ばれた死体を
待ちわびる妻子より先に
「ライターはないか」
「マッチはないか」
けがれた手でポケットをさぐった
会社の犬どもよ

物いわぬ人と知りつつも
着替えの服にクツまでかかえ
炭鉱病院に急いだ
妻たちよ、母たちよ
あくる朝私は見た
ピカピカ光る良質の炭が
がけの上の火葬場に運ばれるのを
「テメエが掘った炭でテメエが焼かれるのか」
若い労働者が涙をぬぐう

四十人のダビの煙は
日通し夜通しうらみをこめて
夕張の谷間をはいまわり はい上がり
真夜中三時の星空にきえた

いますでに桃も桜も散るという
三池のヤマのきょうだいよ
夕張自労のオバさんたちは
「三池のみなさんガンバッテ」と
アカギレの手から手へ
寄せ書きをまわし
入坑の労働者は
「ヒドイコトシヤガル」
とけいじ板の写真に怒りをもやす

日本は一つ、労働者は一つ
三池のきょうだいを殺し
夕張のなかまの命をうばった
その敵に向かい、同じ敵に向かい
いまこそ手をつなごう

この暗い夜が明け
祖国に自由の鐘が
鳴りひびく時
われら久保さんの像を
かかげよう
その清らかな血の色の
赤旗とともに 高く 高く

(1960年2月1日、北海道の北炭夕張炭鉱において発生したガス爆発は40人の死者を出した。)


雨のピケラインで

井手

葉桜が緑の滴を落としていた。

三池炭鉱四山鉱正門前。

雨に煙る丘の下に
久保清殉難之碑が
冷たく雨にうたれていた。

あの日。
民族の明日をきずく
はげしい闘いの滴の中で
久保清はゴロツキの凶刃にたおれた。

その凶刃は
一瞬 炭住街を悲しみにつつみ
怒りがどっと
炭住街の空気をあつくした。

あの日から
六十日余りがすぎていった。

狂いたったあいつらは
しつように弾圧をくりかえした。
四月十八日 三川坑。
四月二十日 宮浦坑。
五月十二日 港務所。
そして 炭住街でも。
たくさんの血が流され
多くの労働者が傷ついた。

なん人も。
なん人も逮捕した。

母親も。
無慈悲にひっぱっていった。

そして
桜が散り。
桜が散り。

蜜柑の花が散って
炭住街の小さな裏庭に
紫陽花の花が咲いていた。

雨にぬれて立っている
ピケ隊の若者の顔は
あかるかった。

三池炭鉱四山鉱正門前。
久保清の碑が冷たく雨にうたれていた。
ピケ隊も濡れていた。

武装組織の冷血性の眼だ。
ーー個人的には、いい人間がいる。それを認めよ。
今更、御用新聞は泣きごとを言うな。
人間であることの一切が許さぬ。
権力組織であることを自白しろ!

夕暮れの雨を肩にうけ
警棒を横に構えてそいつらはいる。
こちらを向いて、じっと立っているのだ。
まっ黒い人民への敵意が
そのかたまりが
ぶすぶすけむりを噴き上げ
鉄カブトの下で炎えているのだ。


公園風景

中村

花の雨が降っている
日曜日というのに人影のない
体育館前の広場

坑夫像が黒っぽく濡れている
噴水のまわりの裸婦像に
しゅろの緑が映えている

革新市政の創りあげた
労働者の街のシンボル
市民の憩いの場に
坑夫像は毅然と立っている

坑夫像の真正面に
いつのまにかコケオドカシの
豪華なビルが建ちはじめている

広場に向かったビルの壁には
なんとのぞき窓が二つ三つ

六月にしゅん工のそこからは
坑夫像がよく見えるだろう
毎日毎日のぞき窓に
坑夫像を監視するうろんの眼
が見られるだろう

警察署のはすかいに
市民広場のまんまえに
デッカイ奴が建ちはじめている

(昭和38年7月1日、第二組合本部事務所、大牟田市浄真町 延命公園前に新築)


とうちゃんば返せ

高椋竜生

真ッ黒くただれたしかばね
虚空をつかみあがろうとする
その手は
いつか いつか きっと
しあわせをつかむ日のための
差別にすり切れた手だった

こげんか姿になって
おどんたちあ
あしたからどげんすっとよかつか
うちの父ちゃんば返せ
なかまば返せ
ぜにはいらん
ひとり息子ば早よう返せ

苦しかったろう
せつなかったろう
今はのきわまで
妻子の名を
呼びつづけたろう
私たちは再びこの悲しみを
くり返しません
三井の大虐殺鬼ども
このかたきはきっと
とって見せるぞ

果てしなき悲しみの底から
ほとばしり出てくる
ひとかたまりずつの怒りの火が
ぐんぐんとおしひろがり
とめどなき炎となって
地底から
地底から
つきあげてくる

この悲しみを
このくるしみをじっとかみしめ
なかまたち
たちあがろう たちあがろう
たちあがろう


11月9日

岩下

忘れもしない一九六三年十一月九日土曜日
午後三時十五分
日本一といわれた三川鉱の大爆発
きのこ雲のようなまっ黒な噴煙
戦争じゃないんだ
と叫んだ

あれから九ヶ月
いまだ立ちあがれない
親・兄弟・友だち

死んだ親・兄弟・友を思い浮かべ
たれともなく話しかける
しかしむなしい魂は
たれも答えてくれない
生きていたら
暑い夏だネ
と云ってくれたろうに

八月十五日初盆
四百五十八名のみたま
三井とその黒幕の合理化の犠牲者となった
炭鉱労働者

かぎりなくつづく合理化の波に
全労働者と共に
押し倒されないように立ちはだかろう
安全より生産だ
人命より出勤だ

四百五十八名の犠牲のうえに
再び三川鉱の 三井の あの
いまわしい悪夢のような大爆発

十一月九日を繰り返してはならない
四百五十八名のみたまが
安らかに眠れる日のため
全労働者のため
うでを組もう

十一月九日を忘れないだろう
四百五十八名の死を無駄にはしまい
どうしても
苦難の道を切りひらこう

十一月九日は忘れまい!
四百五十八名の死は忘れない!
脳裡に焼きついた惨事
誰が忘れられよう

十一月九日を忘れないだろう
十一月九日は忘れない!

四百五十八名のみたま
初盆を迎えて安らかに
ねむって下さい


半未亡人

松尾

半未亡人
それは
昭和三十八年十一月の
あのいまわしい爆発で
CO患者となった夫をもつ
あなたの
代名詞

あれから四年
それに今も
頭痛、耳鳴り、難聴
物忘れ・・・・
幼な子のように
あなたの腕の中に眠る夫に
妻として
女としての喜びもなく
あなたは
深い悲しみにおちこむ

その悲しみの中から、あなたは一つの光を
求めてもがき
苦しむ
半未亡人
どんなにもがき苦しんでも
あなたは生きねばならぬ
それは、あなたにも
二つの宝石があるから
あなたの笑顔を待つ
二つの分身の未来のために
あなたは生き
闘うのだ

半未亡人
勇気を出そう
苦しみはあなただけの
ものではない
合理化の嵐にさらされている
多くの仲間と共に歩く限り
あなたは
一人だけではない
力強く歩くのだ
前を向いて
力強く、力強く


上村さんに献げる

小柳

あなたは還らなかった
しかし
組合員はもちろん
執行部は待っていた
はげしい怒りをこめて
何時間も坑口で待っていた
ひと目見たいが為に
無事な姿を
明るい笑顔を


遂に還らぬ人となった

終ることのない運動に
終ることを知らない人に向って
闘いつづけ
連帯の掛け橋を
呼びかけてきた
その命が
ごきぶりの如く
ふみ消された・・・

苦しい息の下から
充満するガスの中を
はいつづけ
こぶしをふるわせ
母の名、妻の名、愛児の名
すべての愛する者の
名をさけびつづけて倒れた
尊い命ーーー

脱出の苦悩が目に浮かぶ!
日々生きることに精いっぱいの
労働者の血が、肉が、骨までが
どれだけ
しゃぶり取られたことか
苦しかったでしょう上村さん
にえたぎるはらわたを
殺人会社に
たたきつけてやりたい

あなたの叫びという叫びが
あなたの心臓の鼓動が
闇のなかあなたからはなれていった
うらみをのんだ二十六卸!
今にして想いだされる
あなたの横顔

その声は遠いが
聞こえますか母の呼ぶ声が
妻の声が
幸江ちゃんの泣き声が
あらゆるささやきよりも
もっともっと低く遠い
愛する人々の叫び声が

われわれの怒りの声は
読経と線香の渦のなかで
涙となって
したたり落ちたーーー
このにくしみを
あらゆる闘いにかえ
輝ける未来に向って
よりはげしく闘うことを誓う

俺たちは一人ではない
俺たちは生命を尊び
俺たちは組織を愛する労働者
まして
貴男の死を無駄にできようか

上村さん
安らかにお眠り下さい


三池の歴史に忘却はない

中山

三池の空に あたらしい年への
くれないの旗を かざろう

”忘却とは忘れ去ることなり”
どんなに年が かわろうと
三池の歴史に 忘却はない

新しい年を 迎えたとて
過ぎ去りし年を 忘れ去ることが
どんなに 屈辱の歴史か
三池の仲間は 知っている

昭和三十八年十一月九日 ガス爆発
昭和四十二年九月二十八日 自然発火
そのために
どれだけの仲間が いのちを奪われ
どれだけの仲間が 犠牲になったかを
忘れ去ることはできない

涙も枯れたあつい体で
つめたくなった遺体を
どんな気持で だきしめたことかを

父ちゃんを
兄ちゃんを
一家の大黒柱を
奪った三井鉱山への
怒りにふるえる こぶしをつきつけ
歯をくいしばって 坑底にすわり込んだ
かあちゃん達のことを

忘れ去ることはできない

年がかわろうと
CO患者の身体から
COが抜けでるわけではなし
四年半を流動食で ベッドで横たわる
宮島青年が
生きることの尊さする
自分で感ずることのできないという事実を
年がかわろうと

忘れ去ることはできない

生きている尊さを
生きている偉大なことを
みんなもう一度 考えてみよう
口では保安第一と叫びながら
一寸したことだからと
みのがしてはいないか
自分のまわりをみつめてみよう
人間の皮をかぶった奴等が
そのすきを
どんなに利用してきたか

生命を奪い
COでむしばみ
今 また
いのちを奪おうとするとき

スミはドンドン掘って下さい・・・・と
うそぶく奴等が何をしたか
雀の涙ほどのボーナス 五万二千三百円
これが史上最高のボーナスだとホザキやがる
何が史上最高だ

こんな奴等がのさばり返る 三井鉱山
今なお 人間らしい誠意さえ示さない
こんな奴等を
この世から葬り去る日まで

ヤマに生き抜く 父ちゃん達の
ふしくれだった手と
怒りにもえて
こぶしをにぎった手で
かあちゃん達の手で

三池の空に
あたらしい年への
くれないの旗を かざろう


怒り

平田

「母ちゃんどこにゆくとね」

あんたがてれーッと
馬鹿んごとしとるけん
会社が首ば切るていいよる
それで三井鉱山に 抗議にゆくとたい

「この前もいって、またゆくとね。あんたばかり何べんもなし東京に行くとね?」

CO患者にされる前
花を栽培して
家のまわりを美しい
花壇にしていた 夫
それが三川坑大爆発のため
性格を奪われてしまった
今 美しかったあの日の花壇に
草ぼうぼう
それをふり向きもしない 夫

楽しかった昔の夢は
今恐怖の現実と変わり
毎週土曜日のわが家に
労災病院から帰ってくる夫と共に
木枯らしが吹きすさぶ

「母ちゃん、もう病院に帰らんなんとね?」

帰って十分もたたないのに
なんと頼りないーーー夫
「今さっき帰ってきたばかりじゃろがね。二日家に泊まってから病院に帰るとたい」

すると五、六分して
また同じことを聞く 夫

こんなCO患者に三井鉱山は言っている
「お前の中毒症は治ったけん、職場に帰れ」

もしもお前たちの息子や兄弟に
CO患者がいるとしたら
三井鉱山の幹部たちよ
お前たちはいえるか
「お前たちはCO患者ではない、働け」


笑顔を交す日のために

堀前

「お父さん」
「お母さん」
それを呼ぼうともしない唇
またたきもせず
 ただ見開いたままの目
ひねくれて 骨だらけの手と足

どんなにつねってみても
どんなにたたいてみても
大声でその名を
 どんなに呼んでみても
なんの表情もかえずただ
 一点を見つめているだけの

「なぜ笑ってくれないのだ」
「ひとことでもよいのに
 なぜ
 お父さん
 お母さんと
 呼んでくれないのだ」

なんの罪もない親と子を無残に引き裂き
こんな生き地獄のなかにたたき込んだ奴
 三井独占資本

たとえ犬どもがどんなに足もとでほえようと
坑内での保安サボを許してよいものか
再びこのような残酷なできごとを
 許してよいものか

俺たちは闘うんだ
 一日も早く仲間同志が笑い顔を交しながら
 明るく歩ける坑道にするために


やがてくる日に

作者不詳

やがてくる日に
歴史が正しく書かれる
やがてくる日に
私たちは正しい道を進んだといわれよう
私たちは正しく生きたといわれよう

私たちの肩は労働でよじれ
指は貧乏で節くれだっていたが
そのまなざしは
まっすぐで美しかったといわれよう
まっすぐに
美しい未来をゆるぎなく
みつめていたといわれよう
はたらくものの その未来のために
正しく生きたといわれよう

日本のはたらく者が怒りにもえ
たくさんの血が
三池に流されたのだといわれよう

(一説によると、ある映画関係者が作詩したと言う話もある)